どんな会社でも、国の政治でも、
前任者のしたことを全否定
することで、
自分の存在感を出す人々は多くて、
それは、
自分の優位性を示したいとか
自分の色を残したいという、
人間の自然な欲求だとは思うので、

会社くらいの規模の中でそれをするのは
理解できます。

自分のメンツやお金の為
闘うことは悪いことではないし、
民間でなら、
頑張ってやっていくのも
理解できます。
そういうことが大事な場合は、
民間で思いっきりやっていけば
いいと思います。

ですが「国の政治」の中で
プロジェクトの良しあしではなく、
「他の人が始めたプロジェクト」だから、
ということで、途中でやめたり、
自分色を出せるまで
遅らせたりするのは、

国民の税金から成り立った財源と時間を
気が遠くなるくらい無駄にする。


今日は、
マレーシアの例をあげて
お話しようと思います。

2015年、当時のナジブ首相は、
国家財政の安定化を目的として、
GST(物品・サービス税)を導入しました。
日本の消費税に似た仕組みで、
すべての取引に6%の課税を行い、
税収の透明性と持続性を
高めることが狙いで導入されました。

ところが2018年、
マハティール元首相が再選され
復帰すると、
このGSTを「ナジブ色の象徴」として扱い、
政権発足からわずか1か月後には
ゼロ税率化、
さらに数か月後には正式に廃止し、
以前自分が導入していた
SST(売上・サービス税)

戻しました。

SSTというのは、
業種によって会社に課せられる税で、
GSTよりも
課税対象が狭くわかりにくく、

さらに問題なのは、
会社からの申告ベースで
透明性に欠けるため、
結果的に税収は大きく減少し、
国の財政にはマイナスに
働いたと言われています。

  • GSTの税収(2017年):約440億リンギット

  • SSTの税収(2019年):約270億リンギット

このように、
約60%の税収に減ってしまいました。
徴収についても不公平感が残りました。

GSTの方が公平で効率的という
評価があるにもかかわらず、
廃止されたのです。

そして、もうひとつ、
マレーシアで象徴的だったのが、
シンガポール
マレーシアの首都クアラルンプールを結ぶ
高速鉄道(HSR)の

プロジェクトです。

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この構想は、2000年代後半に
マレーシア側(ナジブ首相)から
提案され

2013年には
シンガポールとの間で
正式に合意されました。

350kmの距離を90分で結ぶという
このプロジェクトは、
両国の経済的な統合を促進する
画期的なインフラ計画
されていました。

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その後、2016年には
二国間協定も結ばれ、
2026年の開業を目指して
準備が進められていました。

ところがやはり2018年、
再び首相となった
マハティール首相は、
このプロジェクトについて
「高すぎる」
「財政を圧迫する」として
再検討を表明し、
同年に一旦中止を発表
GSTの廃止と同じ年 。)

その後、国際的な反響や
シンガポールとの協議を受けて
「中止ではなく延期」と
言い直されましたが、
最終的には2021年
正式に中止が決定されました。

これにより、マレーシア政府は
シンガポール政府に対して補償金
(約1億シンガポールドル≒110億円
を支払うことになり、

10年以上かけて進められた
調査・設計・交渉に費やされた
膨大なリソースは、
宙に浮いたままとなってしまいました。

そして2024年、アンワル首相のもと、
やっとまた、まともに
再検討されているところです。

この2つの事例(税金の件と鉄道の件)は、
様々な知識量の差、見識や
物の見方や考え方の相違はある中でも、
明らかに政策的にどちらがよかったかは
わかりやすい事例だと思いました。

前任者の色や貢献度を消したい、
自分の優位性を出したいという気持ちは
うまく利用すれば、自分の人生や、
人類の発展につながりますが

国の政治の政策やプロジェクトでは、
人々の財源と時間を
あまりにも膨大に浪費することもある。

政治家も同じく人間なので、
気持ちはよくわかるし、
そういう方々は民間だったら
きっとチャーミングな場合も多いかも、
とは思いますが、

でも、それ、
国でやるのは高くつきすぎる。


国の未来のためには、
「誰がやったか」ではなく、
「何が残るか」で選んでほしい。


選挙で勝ち抜いた人々は、
「そんなかんじじゃ、
政治の世界では負けちゃうよ」と
思うのかもしれない。

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人は、自分の足跡を残したくて、
誰かの足跡を消してしまうことがある。

でもそれは・・・
思っているほど格好良くは見えないです。

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By jumpinghorse

大卒後新卒でシンガポール航空のCAになったのがきっかけでその後12年間シンガポールに居住しました。現在は月の半分海外、半分東京に。Facebook⇒ https://www.facebook.com/shiomi.yuki   インスタ yuki.shiomi 

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