Episode 5

エスコートサービス。

エスコートするだけの名目。

ただ、それ以上のことがあるのは暗黙の了解。
こんなビジネスはどこの国でもありうる。

経済成長でギラギラした
1990年代のシンガポール。

近隣諸国の王族や
事業で成功した金を掴んだ男達が

高級エスコートクラブ「High Society」で
見せる
裏の顔とは。。。

そこには成功のヒントも、
成功の向こう側の闇さえも見える。
その男たちにいじられて
性欲性癖を受け止める

女達のか・ん・じ・て・いることって?

Episode 5

今では〝メディアコープ”と
言っているけれど、
社名がTCSだった頃のテレビ局は、
俳優がテレビ局に専属だった。

日本のアナウンサーのように、
露出は多いにも関わらず給料制で、
ぜんぜん儲からない。

主役になっても 
普通のサラリーマンの額だった。

テレックスとは
もともと同じエアラインの
ほぼ同期だったから 
トレーニングセンターで
よく顔を合わせていた。

3ヶ月の地上トレーニングの後、
フライトに出たけれど、
その頃は彼はもうすでに 
TCSに入ろうか、
入るのをやめようか、
悩んでいた。

電話がかかってきたとき、
<どうしたらいいと思う?>
と聞かれて、
普通に軽く返答した。

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<やってみて、
もし、だめだったら、 
またエアラインに
戻ればいいんじゃない?> 
と言ったJennyの言葉に、
彼は初めて激昂していた。

<今、【もし、成功しなかったら】って
言ったでしょ? 
You Mean, I will not Succed?
(僕が成功しないっていうこと?)> 

なんだか敏感に
言葉尻を捉えられて、
急に怒られて、
彼女は動揺した。

つまり、
それくらいSensitiveに、
自分の成功を信じていたんだ、彼は。

その後すぐに主役になって、
いつも主役で今でも主役。
外見は特に恵まれているとは思えない。
普通のHDB(公共団地)で育ってきた、
普通の子。

ただ、表情が可愛いところ、
目標達成に執念があるところ、
自己愛が強いところ、
あと、
目標達成のための手段の分析が 
きちんとされていた。

『いろんなドラマ見たんだけれど、
主役には、
たった4つの型しかないのに、
気がついたんだ。
この4つの型ができるようになれば、
主役でいけるんだ。』と 
自分の研究結果を力強く話してくれた。

”Only4Pattern, ONLY FOUR”と 
とても強調していた。

その後は、
彼女に電話をかけてくるときには、
『Actingをしているテレックスです。』と 
堂々と語るようになって、
誇らしげだった。

ローカル俳優で初めて
70万ドルのCM料が
とれるようになったと
新聞に出てからは、
小さいLodgeという名前がつく、
プールがないけれど
場所は一等地のScotts Roadの
交差点沿いの物件を買って、
なんとか面子を保とうとしていた。

努力家で、顔がむくむからと 
夜は水分は一切とらないし、
おなかに少しだけ肉があるのを
絶対に見せたくないみたいで、
夜のそういうときにだって、
絶対にTシャツを脱がずに、
腹まわりを見られることだけを、
少女のように避けていたのは
異常な程だった。



ハブロックロードから
Zoukまでの1本道は
駐車待ちの車で込み合っている。

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その脇をすり抜けて
優先的に通される
お金持ちの友達の車の助手席に、
我が物顔で乗り込んで、
007のJames Bond役の
【ピアース ブロスナンのマネをしました】、

というような、
‘まぶしい目’をして
表情を作った顔には、
まるで、

『お金は、ありません。』
と書いてあるみたいだったけれど、
そこが 
男のかわいいところのような気がした。

自己演出は、
した者勝ちなのかもしれない。
多少の滑稽さが残ったとしても。。。  

結局のところ、 
お金があって主役俳優を横に載せている、
そんなところにプライドを感じる
お金持ちもいれば、

逆に、

チャームがあっても
実のところはお金がない俳優業も、
どっちにしたって滑稽なんだから。


女の場合は年をとったら
見た目も関係なく
価値も激減だ。
若さにしがみつけばしがみつくほど
悲しさがその分、強調されていく。


’High Society’の一番人気は
家で待機している女優でも
有名モデルでもなく
NUS(シンガポール大学)の
女子大生18歳のHazelだ。
170センチの長身、
名前通りの栗毛色の瞳で
快活に笑う賢そうな子。
色気を強調したような子では全くない。
茶色い革のベルトの時計をして
カーディガンを羽織っている。



Momが、
”タイの●●社長はHazelには
XXXXXドル払う”と言っている。
その社長は毎回10名の女の子を呼んで、
どれだけ自分が強いのか
誇っていたけれど、
最後はつらそうで、
目をつぶって両手を合わせて
「無」になろうとしている姿は
まるで修行僧みたいだ。

Girlsは早く終わるのを
全員が願っているのに、
一人で達成感を感じて満足気だ。

「こんな社長は絶対に
社員の気持ちなんか
わかっているはずがない。」

Jennyには経営のことなんか
これっぽっちもわからないけれど
ただただ、そんな風に感じた。

誰も望んでいないことを
自分の力を見せたり確認するために
修行僧くらいの苦行ほどまでも
実施する、優しいけれど
話もつまらない男。
まあ、とは言っても、
‘High Society’の上顧客だ。

世の中にはいろいろな種類の価値がある。


それぞれの価値観や見方からしたら
全員が滑稽な存在になりうる。
みんな、どこかしら、
おかしな人で、おかしな存在。


だから結局は
そんな人の目なんて気にしないで、
達観さえもしないで、

好きなように生きればいいんだって
そう思ったとき、
Jennyは自分が、
誰よりも長く生きているように感じた。

こちら

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By jumpinghorse

大卒後新卒でシンガポール航空のCAになったのがきっかけでその後12年間シンガポールに居住しました。現在は月の半分海外、半分東京に。Facebook⇒ https://www.facebook.com/shiomi.yuki   インスタ yuki.shiomi 

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