Heart to Heartという言葉が
私はずっと好きではありませんでした。
国際交流の場面でよく使われていた
「言葉が通じなくても、
心を通わせることができる」
という意味でつかわれる
Heart to Heartというフレーズは、
軽々しく皆が
真実のように言っていました。
実際には、
話さないで分かり合って
仕事を進めるのはできないのにな、と
若い生意気な私は思っていたからです。
シンガポールに住んでいた時に、
ある会社のMD(現地子会社社長)が
「僕は英語もわからないし、
シンガポールのことも
何もわからないけれど、
Heart to Heartで
みんなが助けてくれて
みんなが教えてくれる。」
と言いました。
その言葉を文字化すると、
とっても素敵で謙虚に見えるけれど、
そう言っている時の、したり顔や
一人ご満悦の演説みたいなトーンに、
私は、
「なんて傲慢な、えばりんぼなんだろう。
下で全部仕事する人はかわいそうだな~。」
と思っていました。
みんなが寄ってきて、
その人を助けてくれるのは、
その所属している会社のおかげだし、
利害関係があるからで、
その人個人の人間的魅力と関係ないし、
私もその方の会社名は覚えているけれど
その方の名前は忘れてしまいました。
その後も、いろいろな場面で
”Heart to Heart” という
甘っちょろいフレーズで
乗り切ろうとして
失敗している方々を多く見ました。
例えば、東南アジアの支店に
本社チーム数名が視察出張に来て、
その滞在中は、
すっかり現地の東南アジア人に
持ち上げられてゴマをすられて
いい社員だと思い込んでしまう。
でも、そのゴマちゃんは普段は、
現地でいろいろやりたい放題の
良からぬ人々だったり。
本社の一番上の人はたぶん、
全部わかっていながら、
それも込みで計算して、
何も言わないということも
あるかもしれませんが、
それ以外の人々は、
笑顔で持ち上げてくれる東南アジアの人々と、
Heart to Heart できていると勘違いし、
さらには、
言葉を超えて海外で渡り合っている
自分の人間性も優れてると
勘違いしていたり。
そんな時代から、、、
何十年もたって、本当に何十年もたって、
日本で女子プロレスを見に行きました。
元クラッシュギャルズの長与千種さんが
マーベラスという団体を設立していたので
見に行きました。
プロレスファンだし、長与千種選手は
大好きな選手の一人でしたし、
プロレスだけではなくて、
千種のトークや歌が大好きでした。
その長与千種が、その日
リング上でマイクで
外国選手の話をした時に、
“言葉は通じなくても、
Eye to Eye, Heart to Heart“
と、言いました。
文字通り、はだかんぼうで
必死に生きて闘って、
そして
Heart to Heartと言っているわけで、
それからこの言葉が、一週回って
受け入れられるようになりました。
そういうわけで、
今日書きたかったことは
1週目でHeart to Heartと
軽々しく言って、
いろいろなことから体裁よく逃げたら
薄いペラペラな言葉になるけれど、
もう1週廻って出たHeart to Heartは
別物、
ということです。
それは、自分に向けてでもあります。
時々、はだかんぼうで闘う
長与千種はじめプロレスを見に行きます。
前髪の位置を終始気にするような
安っぽい体裁よさを捨てた生き方を
見に行きます。
Netflixの「極悪女王」は素晴らしくて、
それぞれの選手の特徴が
そのまんま再現されていて、
サイコーでした。
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