Scene① あの頃、マスクが手に入らなかった。
それでも人々は、
「スタッフがマスクをしていないお店なんて論外」だ、
「高性能なN95でなければ感染を防ぐ効果がない」
「医療機関以外でも少なくとも 「サージカルマスク」
は絶対だ。」と
企業や店舗に求めました。

実際の状況は、
ほとんどの転売ヤー達が
通常の10倍の仕入れ値を覚悟しても
手に入れることが
できなくなってきていました。
私は、その頃、ある会社から
「マスク、どこかで調達できない?」
と聞かれました。
海外関連実務をしているので、こんな時こそ
「頑張ってここは何とかしないと」
と私は思いました。
そうしないと店舗に支障が出てしまうので
とにもかくにも、何とかしないと!
と思ったのです。
そこから始まったのが、
マスク売買に明け暮れた3週間でした。
この騒動を通して、
私は社会に潜む、
矛盾した「感情」と対面しました。
「感情」が「事実」を上回ることも
学びました。
“正しさの沼”が社会に広がっていると感じました。
人々の「一面的な正しさ」や、
「矛盾した願い」に
企業が押し潰されそうになっているのを感じました。
それはあの春だけの話ではなく
今もなお、違う形で、
対企業以外にも様々な場面に顔を出します。
今日は、
その体験を書いてみたいと思います。
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Scene②「マスクがない」は、
通用しない
マスクは世界中から簡単には探せなくなっていても、
お店を営業するなら、
「マスクがない」は、通用しなかった。
顔につけていないだけで非難され、
会社の信用も失われかねない。
コロナ感染防止効果が 布マスクにはない、
という事実とは関係なく、

人々が、「布マスクでもいいよね」
という 感情にシフトするまでは、
サージカルマスクを買うために探した。
こういう時のこういう商品は、詐欺ばかりで、
お金を払っても納品されないなどは
当たり前すぎる為、
「支払い前に納品してくれること」
を条件に いろいろなルートで探した。 
そんな都合のいい業者が、世界中どこにいるのか?
でも、いた。必死に探した。ついに見つけた。
私は合計500万円分のマスクを仕入れた。
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Scene③
「私達はそのような不正ビジネスの
お手伝いはできません!」
初めての取引にもかかわらず、
商品が支払い前に届いた。
すぐに銀行に支払いに行った。
窓口でいろいろ細かく聞かれたので、
請求書を見せたところ、
購入商品がマスクだということを
窓口の若い女性が知った。
その瞬間、彼女は目を見開いて、大声でいきなり、
「私達はそのような
不正ビジネスのお手伝いはできません!」
とヒステリックに言った。

私は、転売で稼ぎたくてこんなに必死で
数日間走り回っているわけでもないし、
理解されがたいのは承知だけれど、
私なりの立場があり
正義もありでやっているので
「そんなに余計な一言
(不正ビジネス) を添えて、
大声でしかりつけなくてもいいじゃない!
中国に送金するわけじゃないのに!」
私は、心の中で憤慨した。
が、顔に出さずに黙って退散し、
10分後には違う方法で送金した。
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Scene④「あんまりやりすぎちゃうのもアレだし、 いらない」
私の手に入れたマスクは、
その時の相場感では完全に安い方だったし、
すでに納品されているし、
すぐに、その探していた会社に報告した。
が、驚いたことに、
「あんまりやりすぎちゃうのもアレだし、いらない」
という、よくわからない言葉で
買ってもらえなくなった。
布マスクを買うらしい。

こういう生ものの件で、
通常の決裁をする時間もなく
よく知っている会社だったので急いだのだが、
なんちゃって役員と
ラインに会話が残っているだけで
PDFの約束書面はなかった。
なんちゃってはすぐ逃げるだろうから、
騒ぐよりも、早く他の売り先を探すことにした。
相手を見ないで動いたのは、ミスだった。
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Scene⑤
「良心はおありですか?」
なんとか売り先を見つけようと、
オークションに出品した。
すると、出品した瞬間に取り消された。
何度も繰り返してやってみたが、
出品と同時に何人にも報告されて、
出品がブロックされる。
その瞬殺具合から、彼らの怒りが伝わってくる。
「良心はおありですか?」
という慇懃なメッセージが、
画面に残っていた。
私には、良心があった。
「営業を止めたくない」
「現場を守りたい」
そのために奔走した自分の良心を、
私は信じていた。
「良心がおあり」なので、
仕入れ値で出している。
でも、世の中は
「マスクを売る人=悪」と定義した。
マスクがないことが分かっている時にも、
マスクをしていない店舗スタッフを責めるから
マスクを仕入れたのだ。
「完璧な衛生対策をして」
「でも値段は上げないで」
「倫理にも完璧でいて」
……企業は魔法使いにならないといけないな。
数か月分も備品を在庫で抱える経営を
みんなは望んでいるということなのか。
誰がどんな風に仕入れて、
どうリスクを背負ったかなんて、
誰も想像していないように感じた。
みなし転売ヤ―となった私は
マスク在庫を抱え、 みんなが望んだとおり
”ざまあみろの状態”になった。
私は損失を政府や誰かに補償してほしいと
願ったことはないし、
ただ、ほしい人に 仕入れ値で
買ってほしいだけだった。
でも、その手段も奪われてしまった。
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Scene⑥ 私の大金500万円
知り合い達に「マスク売ってくれない?」
と頼んだ。
優しい友人たちは
本当に一生懸命に動いてくれた。
「今日ね、10箱売れたよ!」
そんな報告がうれしくて、
心が救われた。
でも、私は同時に気づいていた。
「このままでは終わらない……
あと495万円分ある……」
やさしさは尊くてありがたい。
でも、それだけでは救えない現実もある。

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Scene⑦ 謎の人たち、朝飯前
そこで私は2人の“なんだかすごい人”に
同時にラインした。
情報商材屋さんのような胡散臭さではなく、
むしろ、寡黙なミステリアスな実力者タイプ。
ひとりからはラインした直後、
売り先があるよと返信があった。
そのため、もうひとりに
「もう大丈夫です」と伝えたら、
その方も、すでに新幹線でその日、
売り先に会いにアポを既にとったとのことで
在庫の半分をお願いすることになった。
その方々にとっては、朝飯前すぎのようだ。
こうして私のマスク在庫はなくなった。
このとき、
人々の「一面的な正しさ」や「矛盾した願い」に
企業も必死に、
こたえようとしているのを感じた。
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Scene⑧ 今思えば、
ここまで書いた人々の正義感は、
私は、もちろん理解できます。
オークション画面の前に
複数名がスタンバイしてガードして、
マスク出品を瞬時ブロックしていたのは、
素晴らしいことだと思うし、
私も通常はそちら側に共感する人間です。
ですが立場が変われば、
反対の理由もそれなりにあると思いました。
世の中の現実の中では、
それぞれの立場の正義が
両立できない場合が、
ほとんどであると思いますが、
そうした批判や声があるからこそ、
少しずつでも理想に近づいていけたり、
一面的でも、それが繰り返されることで、
透明性が増したり、 改善が進んだりすると思います。
そういうわけで、私はこのマスク紛争記により、
転売する人も何かの役に立っていて、
不思議な仲介者も何かの役に立っていて、

一面的視野の正義を主張する人も役に立っていて、
結局みんな役に立っているので、
あまりお互いに対して
過剰に批判的にならないでいたいな、
そう考えるようになりました。
※本記事の内容を引用・ご紹介いただく際は、
出典として下記リンクをご明記いただけると幸いです。
https://bit.ly/44J7XkB
感じ方や言葉の紡ぎ方には、
その人だけの色があります。
もし心に響く部分がありましたら、
ぜひ引用元として、
このページの存在も添えて
伝えていただけたらと思います。

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